「ウィルも行ってるの?」


エマが尋ねると同時、店主がまたしても「サービスだ」と言ってソーセージの盛り合わせと彩り野菜のピクルスを出してくれた。

ふたりが揃って感謝を口にすると、店主は満足そうに踵を返し客の注文を受けに行く。

それを見送ってから、メアリはエマに向き直り口を開いた。


「近衛騎士はほとんどの隊が出てるってジョシュア先生から聞いたわ」

「そっか。ウィルって昔から何やっても器用だったけど、まさか騎士様になっちゃうなんてね」


騎士といえば老若男女問わず憧れを抱かれる存在であり、王に命を捧げ仕える名誉ある職業だ。

まして、近衛騎士ともなれば誰でもなれるものではなく、エマにとっても幼馴染であるウィルが騎士として働いていることを誇りに思っている。

それと同時に羨ましいという感情も持ち合わせていた。

その理由は、エマが密かに恋心を抱いている相手、ルーカスの部隊にウィルが所属しているからだ。


「ウィル、ほとんど毎日ルーカス様と一緒に行動してるんでしょう? たまにはあたしと変わってくれないかしら」

「それにはまず、エマが騎士団に入らないとね」

「調理用のナイフしか握ったことないけどいける?」

「どうかな。でも私は応援するよ」


メアリがエマのジョークに笑ってそう答えた直後のこと。

店の扉が勢いよく開いて、その音に客が皆驚き店内が一瞬静かになった。