確かに、皇子が騎士団長だという国があることをメアリは知っている。

ただ、それは自国の場合だ。

潜入時は別として、皇子が他国の騎士であるなどという話しは聞いたことがない。


「父からはさっき許可を貰った。イアン殿や団長もメアリが良ければ問題ないと。メアリは、俺を側に置くのは嫌なのかな?」


答えあぐねるメアリは、先程の会話が全てアクアルーナの騎士になるというものだったのを理解し、じっと見つめるユリウスに嫌なはずはないと首を振る。

すると、ユリウスは顔を綻ばせメアリの手から包帯を奪うと自らの手を重ねた。


「君も、俺を望む?」


ユリウスが望むように、側にいることを願うのか問われ、メアリはようやく自分の気持ちに素直になって頷いてみせる。


「望むわ、ユリウス……あなたが、私の側にいてくれることを」


見つめられ、鼓動はうるさいほどに高鳴るのに魅入られたように動けない。

それでもどうにかメアリが答えると、ユリウスの美しく整った顔が近づいた。


「では、誓おう。俺は君だけのもので、君は……?」


ユリウスだけのもの。

そう告げるとすぐ、互いの唇が重なった。

呼吸を助けるものではなく、互いの心が求める誓いの口付けに、メアリの身体は幸福で満たされていく。

あの予知の時はいつ訪れるのか。

きっと、そう遠くないことを予感しながら、ユリウスと共にアクアルーナに帰れる喜びを噛みしめたのだった。






FIN