「ルシアン皇子はこれからどうするんですか?」
モデストはいなくなるけれど、体調のこともあるし今後もイスベルで過ごすのかと訊ねると、ルシアンはゆるりと首を横に振った。
「帝都に移って父上を支えようと思う。無理はできない身体でも、もう幼くはないし加減は覚えたから」
「そうなんですね。じゃあ、いいお薬があれば帝都で頑張るルシアン皇子にお送りさせてください」
「あれ? 君は帰ってしまうのかい?」
意外だとばかりに絹糸のように細い髪を揺らし、頭を傾げたルシアンに、メアリも「え?」と首を捻る。
「ユリウスのお嫁さんになるなら、一緒に帝都で暮らせるなぁって楽しみにしてたんだけど」
「そ、その話は終わったじゃないですか」
以前の提案を口にしたルシアンにメアリが戸惑いをみせる。
「そうだっけ?」と、楽しげに惚けてみせるルシアンは、すぐにからかったことを謝った。
「ごめんよ。そうだね。君はアクアルーナの王女様だ。ただひとりの後継者。お婿さんを迎える立場だもんね」
「そう、ですね……」



