イアンとオースティンが指示を仰ぐべくメアリを振り返る。


「こちらも同じように」


メアリは答え、立ち上がろうとするユリウスを支えた。

近衛騎士たちが武器をおさめると、皇帝がモデストへと近づき、ルシアンもまた後に続くのが見える。

兵たちは波が引くように割れて皇帝の歩む道を作った。


「へ、陛下! 何を仰いますか! ユリウス皇子は陛下を裏切り王女を逃した大罪人。そして、メアリ王女の力は必ずや陛下のお役に立ちます! しかし、アクアルーナに戻られては陛下の脅威になるのです! 手に入れられぬのであれば亡き者にせねば!」

「王女の力は脅威にはならぬ」

「何を根拠に……」

「脅威は、お前の憎しみと、余の弱さが生むからだ」


皇帝の言葉に、モデストは言葉を失う。

メアリも驚きに目を見張った。


「陛下は……知っていたのね」


思わず零した声に、ユリウスが反応する。


「メアリも知ってたのか?」


痛みを堪え少し弱った声で訊ねるユリウスに、メアリは頷いた。