「それは、父上の言葉か?」
「いいえ。ですが、皇帝陛下もアクアルーナが手に入ればお喜びになられます」
「父上の言葉でないのなら出すぎた真似だ。下がれ」
声色を低くしたユリウスの冷たい視線を受けたモデストは、僅かな沈黙の後、笑みを貼り付けた。
「……これは、失礼を。では明日の評議会で進言しておきましょう」
粘着質な声で話し一礼し、白いスカーフを直しながらモデストも部屋を出て行く。
音を立てて扉が閉まると、メアリは息を吐き出した。
「……嫌な人……」
「だろう?」
ユリウスが振り返り、互いに苦笑する。
「あの、ありがとう。庇ってくれて」
「……あいつの好きにさせたくないだけだ」
それでも嬉しかったと伝えるメアリに、ユリウスは、部屋に戻ろうとだけ答えて、足首を庇い歩くメアリを支えながら、父が座っていた椅子に背を向けた。



