『心を凍らせた父は、その瞳に息子の俺を映しても何も思わない』
メアリは、イスベルに着いたばかりの頃に言っていたユリウスの言葉を思い出した。
確かに、瞳は光を失ったかのごとく暗く、語る言葉にも温かみはなかった。
それでも、一言くらいはと心を痛めていると、モデストがメアリへと歩みを進める。
しかし、近寄らせまいとするようにユリウスがメアリの前に立った。
モデストの片眉がピクリと動く。
「騎士としての癖が染み付いておられますな、ユリウス皇子」
「ああ……お前のおかげですっかりとな」
「アクアルーナの居心地はいかがでしたか」
「知りたいのなら今度はお前が潜入でもすればいい」
ユリウスが鼻で笑うと、モデストは「それはいいですな」と余裕の態度で返した。
「ああでも、それは別にアクアルーナをヴラフォスの帝国領にしてしまえば叶うので必要なさそうです」
その言葉に、メアリは堪らずユリウスの背から出た。
足首の痛みを感じたが、無視をしてモデストを真っ直ぐに見据える。



