メアリの突っ込みを受け流し、さりげなく弟をオススメする兄に、ユリウスは溜め息を吐いた。


「そうか。ユリウスはメアリ王女との結婚は望まないのか」

「なっ、別に俺は」

「やっぱり裸の付き合いをした僕にしておく?」


どことなく誤解を招きかねない言い方をしたルシアンに、メアリは再び顔を赤くする。


「い、いえ、あの、お話はありがたいのですが、なぜ、守ろうとしてくださるのですか?」


政治的な観点からすれば婚姻により無益な争いを無くす効果があるのは承知している。

けれど、メアリとルシアンは今日知り合ったばかりだ。

責任や恩だけで、そこまで協力してもらえるのが不思議で問いかけると、ルシアンは笑みを浮かべると言った。


「そんなの決まってる。父とモデストが大嫌いだからだよ」


心からそうであるのだと言わんばかりにはっきとした声で告げたルシアン。

その瞳は底冷えするかのごとく冷たく、メアリは頬を灯していた熱が一気に引いていくのを感じていた。