「兄上! なぜそうなるんです!」

「だって、その方が自然だろう? 潜入先で騎士になり、出会い、いつしか互いに想い合うようになった。両国の争いを無くすためにも結婚を決意し、説得すべく二人はヴラフォスへ。今ならこの宮殿の者たちも勘違いしてくれているようだし完璧だ」


確かによくできたストーリーで、メアリは思わず拍手しそうになる。

その横で、ユリウスはモデスト相手にそれだけでうまくいくだろうかと思案していた。


(ずっとアクアルーナにいた俺では、メアリと結託してヴラフォスを陥れるのだろうの疑われ悪い方向に流れることもあり得る。そうしたら、メアリの扱いがひどくなるかもしれない……)


ならばやはり兄と結婚するのが安全だと思うユリウスだったが、そうしてくれとは言えなかった。


(……言いたく、ないのか。俺は)


それはなぜか。

考えてしまったら気付いてしまう。

踏み込まないと決めたのだと、ユリウスは強く拳を握った。


「それで、メアリ王女は僕とユリウス、どっちがいい?」

「そんな、料理のコースは肉にするか魚にするかを聞くみたいにさらっと言われましても」

「ユリウスのこと、好きになってくれたら嬉しいな」