ユリウスの願いが何かはわからないが、何かを願ったその時には叶えてもらえたらいい。

攫うことに従うのがお礼のままでは悲しいと思っていたメアリは、これを密かなお礼とし、声には出さず、喉の奥で願う。

そうして、小さな炎が灯ったランタンを柔らかな風に乗るように放った。

緩やかに夜空を目指して上っていくメアリのランタンを見ながら、ユリウスもまた密かに願う。


(メアリの願いが、叶いますように)


敵国へと攫われ、理不尽な思いをするであろうメアリがアクアルーナへ帰りたいと涙したら。

それを助けることのできない自分の代わりにどうか、と皇子としてではない、ユリウスとしての想いを胸に、ランタンが見えなくなるまで望み続けた。