「な、なんですかいきなり」

「大人しく攫われるだけでなく、敵の俺に気を使うし、バカだ」


抵抗しないどころか怪我の手当てまで施し、冷えないようにとブランケットをかけて気遣う。

そこに下心など見えず、だからこそユリウスは突き放しきれないのだ。


「そんなバカで優しいお人好しのメアリに、お祭りに参加する時間くらいはあげられる」

「で、でも」

「ただし、宿屋を見つけてからだ。それと、俺の監視付き」


それで良ければ、少しだけ見て回ってもいいとユリウスの許可を得たメアリは、嬉しそうに「はい!」と頷く。

その明るい表情が消えないうちに、ユリウスは宿屋が多く並ぶ通りを目指した。