夜が終わりゆく薄明の時刻に、メアリの意識は浮上し瞼を震わせた。

身動ぐと、身体を包むふわりとしたキルトのブランケットがズレて肩が冷んやりと冬の空気に触れる。

ふるりと寒さを感じて身を縮めたメアリは、瞼を開くと視線をゆっくり辺りに彷徨わせた。

板張りの床と温もりを失ったランプ。

仄暗い室内は静かで、メアリはその静けさにもう少し眠りたいと再び瞼を閉じたのだが。


(……あれ? 私……昨日は椅子に腰掛けて寝ていたような……)


テーブルに上体を預け、ユリウスの帰りを待っていたはずだったが、なぜベッドに横になっているのかと身体を起こす。

もしや寝ぼけてベッドに潜り込んだのかと不思議に思いながら室内を見回すと、いつの間に戻っていたのか、ユリウスが壁にもたれ俯き眠っていた。

立てた片膝に腕を乗せ、穏やかに肩を上下させている。


(ユリウスが運んでくれたのかな)


そんな風に予想して、けれどそうであるなら担がれたのではと、自分の体重を気にかけたところで眠るユリウスが寒さを凌ぐものを何も掛けていないことに気づいた。