二人が目的地に到着したのは、太陽が沈みかけ、空が油絵のような綺麗なグラデーションを描いた頃だ。

メアリは、冷たい風が頬を掠めるのを感じながら、ゆっくりと水車が回る村の商店に目をやった。

アクアルーナではあまり見られない果実や、動物の毛皮等、森深いフォレスタットならではの名産品。

その中にある物が並んでいるのを見つけて歩む速度を緩める。

背後の足音が離れたのを察知したユリウスが振り返ると、メアリの足が止まりかけており、また、その視線の先に薬草があるのに気づいた。

そして見つめる瞳に寂しさを滲ませていることにも。


「メアリ」


ユリウスの声にハッと目を開いたメアリは、慌てて駆け寄る。


「ごめんなさい。ぼうっとしてしまって」

「薬草が必要?」

「いえ……よく、頼まれて煎じていた薬草だったから」


ユリウスの前で父の名を出すのは気が引け、あえて伏せて話したのだが、メアリの表情が物語っていたのかユリウスは「……そうか」と声のトーンを落とした。

しかしそれも束の間。

ユリウスは息を吸うと気持ちを切り替えメアリに背を向ける。