「また一緒に紅茶を飲みましょう」


今度はメアリから約束をし、嬉しそうに首を縦に振ったユリアナと別れ、イアンらと共に修道院を後にする。

そうして、要塞へ向かうオースティンとウィルとも別れ、イアンと二人、領主の屋敷に戻る最中のこと。

メアリはユリアナから聞いたヴラフォスの宰相モデストがティオ族について聞き回っていたという話しをイアンに伝えた。

イアンは淡く瞬く星空の下で、確かに気になる動きであると口にする。


「予知の力を持つ者を探している可能性は高いでしょう。ただ、町娘であった以前とは違い、今は常に騎士がついています。万が一、モデストがメアリ王女の力に気づいても簡単には手は出せない。その点は安心してください」


気遣われ、メアリが「ありがとうございます」と返すと、イアンは屋敷の門を潜りながら「いや……安心はできないかもしれないな」と不穏な言葉を零した。


「内通者がいるかもしれないという話を覚えていますか」

「ランベルト大侯爵様が言ってたものですか?」


メアリの脳裏に浮かんだのは、自らが王女であることを明かした会議の場。

オースティンとイアンがヴラフォスの内通者ではないかとランベルトが疑いをかけた日のことだ。