ヴラフォスの宰相、モデスト・テスタ。

まさかティオ族の話題からその名を聞くことになるとは予想もしていなかったメアリは、驚くよりも首を傾げた。

なぜ、モデストが、と。

ユリアナの話しでは、修道院の繋がりで得た情報らしいが、どんな情報に辿り着いたのかはわからないとのことだった。


「どうぞ、兄様にも知らせてあげてくださいな。お調べになってくれると思いますから」

「はい」


メアリがひとつ頷いてみせると、ユリアナが微笑みを浮かべる。


「難しい話はここでおしまいですわ。次は、あなたがこの修道院でどんな風に過ごしていたのかお話ししましょうね」

「はい! ぜひ!」


表情を明るくしたメアリは、一旦モデストのことを忘れるように紅茶を喉に流し込んだ。

そして、生まれて間もない自分がマリアの部屋で毎晩眠り、母を恋しがるように泣いていたこと。

いつのまにかユリアナの腕の中だと安心するようになったこと。

少しずつ成長していく中で、メアリが見せる笑顔がたまらなく愛しかったとユリアナは話した。

それから、メイナードが視察の名目でメアリに会いに来た時のことも。