イアンと別れ、ひとつめの宿場町を出てから数刻。

抜けるような青空の下、次の宿場町を目指し行軍を続けているメアリたちは辺りを警戒しながら広い街道を進んでいた。


「メアリ王女、疲れてはいませんか?」


ユリウスに声をかけられ、メアリは大丈夫ですと微笑みと共に返す。

体の疲れは気にならない。

でも気持ちが休まらないメアリは、気づくと表情を固くしてしまっていた。

ユリウスとの会話を聞いていたルーカスが、自分の馬をメアリへと寄せる。


「しかし、イアン殿も急にどうしたんだろうな。警戒を厳にしておけなんて。斥候の報告だとヴラフォスはまだロウを出ていないんだろ?」


ルーカスの問いに答えたのは、メアリの隣で姿勢良く馬に跨るユリウスだ。


「この辺りの山には山賊の根城がある。それを警戒してるのでは?」

「山賊、なぁ。でも、普通に考えて金品強奪は不可能だろう」


行商人相手とはわけが違う。

例え山賊たちが束になってかかっても、アクアルーナの近衛騎士団にはかなうまいと、ルーカスが肩をすくめた。

すると、セオが「目的がメアリ王女様だったら?」と話に割り込んでくる。