政治に関わる重臣らが集まり円卓につく。

近衛騎士団の隊長たちも並び、室内には刺々しい空気が漂っていた。


「確かな情報か?」


重臣のひとりが眉を潜めて問うと、別の者が次々に口を開く。


「ロウを拠点に軍が集められているのは確かなようですな」

「しかし、フォンタナはフォレスタットとの国境に近い。何故ロウから近い西のモントを目指すのではなく、東のフォンタナに向かうのだ」

「今後に備え、同盟による支援を分断する目的かもしれないですよ」

「確実に食い潰すつもりか。あり得なくはないな」


飛び交う言葉はどれも穏やかのものではなく、メアリは事態の深刻さを憂いて表情を曇らせていた。

同盟国の支援を分断。

アクアルーナを孤立させ食い潰す。

予想されるヴラフォスの思惑が、水面に広がる波紋のように場の不安を広げていく。


「また罠である可能性は?」

「今回は調印式のような餌はぶら下げていない。それは杞憂ではないか?」

「あちらの宰相殿は狡猾だ。疑っておいてもいいだろうが、目的がわからんな」


重臣たちの間に調印式の話題が出ると、騎士隊長たちが僅かに表情を変えた。