「ご、ごめんなさい! 悪気はなかったんです。あっ、行きたいという意思ははっきりとあったんですけど」


訓練服であるクリーム色のキュロットスカート。

その下に伸びる黒いタイツに覆われた膝をメアリは見つめつつ答えた。


「悪気はなかった?」

「はいっ、本当に。ただ、少し息抜きしたくて魔が差したといいますか、とにかくイアン様が心配するようなことは何もなく……は、微妙だったかもしれませけど、むしろバレてしまったなら心配をかけてしまってるんですよね。本当に申し訳なく思って」


います、と。続けるはずの声は、イアンの深い溜め息で遮られる。


「あなたが何かしでかしたのはよくわかりました。その件については後ほどじっっっくり伺いましょう」

「……え? 抜け出したのがバレたのでは」


では、イアンの話とは別のものだったのかと驚いて顔を上げたメアリ。

イアンはモノクルを中指で押し上げ位置を直すと、切れ長の瞳を据わらせた。


「ほう、抜け出したと」

「もしかして、別件ですか!?」

「ええ、全くの別件です」

「ああああああ……」


メアリは自爆したことを悟り、顔を真っ青にする。