「人が良すぎるよ、香里は」

「そうかな?そうでもないけど?」

久しぶりに翠と飲みに出かけた。
誘ったのは私から。
翠はやっと私が前向きになったと思ったのか、二つ返事で行こう!と言ってくれた。

「だってそうじゃない?あいつも辛いだなんて、よく言えるわね?悪いのはあいつじゃない?」

ビールの一気に飲み干すと、翠はテーブルに激しくジョッキを置いてそう言った。

確かにそうなんだけど…

「だけど…あの時、私と出会ってなかったら…って思うじゃない?」

「ないない!」

激しく首を横に振ったかと思うと、翠は私の肩を持って目を見た。

「いい?あの合コン誘ったのは私だから、申し訳ないんだけど。彼女、もうすぐ結婚しようかも?って思ってる彼女がいるのに、人数合わせでも来る男が悪いに決まってるじゃない。しかも、あなたには彼女とは別れたって、二股してたのよ?そんな男の事を心配なんてしなくていいの!分かった?」

「あ、う、うん。そうだね」

翠の気迫に負けてしまい、頷いた私に

「でもね、あの時、香里と結婚するって言った時は本気だったと思う。ただ、妊娠してなかったから…その気が薄れちゃったのかな…。あーもう!頭グチャグチャ。すみませーん、ビールお願いします」

翠は、空になったジョッキを上に上げて店員さんに声をかけた。