翠から聞かされた話を私は認める事が出来なかった。

でも、拓真さんに別の人がいるんじゃないのか?と思った時に感じた違和感が、そこにあると思ってしまった。

「香里、これからどうするの?」

「…どうするのって…、私はどうしたいんだろう」

翠に、どうしたいの?と聞かれて返事に困ってしまった。
私は本当にどうしたいんだろう。
拓真さんにどうしてほしいんだろう…

「もう、きっぱり忘れてしまうのが、いいのかもね」

「う、うん。そうだね…」

「今すぐは無理だと思うけど、時間が解決してくれるよ。変な事考えちゃダメだよ」

「うん。そうだね…」

「もう!しっかりして!そうだね、しか言ってないよ」

「うん、そうだね…」

頭が混乱していた。
何が本当で、何が嘘だったのか…

私が過ごしたあの日は、なんだったんだろう。でも、私を愛していると言ってくれた日が嘘だったなんて思いたくない。
妊娠していたから私と結婚しようとしてくれた、ってことは彼女とは別れるつもりだった?実は彼女と別れる理由が欲しかった?ううん、そうじゃない。


「香里、そんな調子で仕事出来るの?人の命預かってんだよ?」

そう、私は看護師だから、一瞬の気の緩みから命に関わる事故になる。
翠の言うように、仕事が出来るんだろうか…

私は、病院に体調が悪いと言って、4日ほど仕事を休んだ。

頭を冷やそう、そう思った。