いつものように拓真さんが泊まっていた。
私は、何度も突き上げられた拓真さんの情に疲れて寝てしまっていた。
気がつくと鳴った電話を持って拓真さんが、ベランダに出て行くところだった。

聞くつもりもなかったし、聞こうとも思わなかった。
ただ、声が耳に届いてしまった。

「あ、慶都?こんな時間になんかあったの?」

けいと?
男の人…かな。誰だろ?
でも、拓真さんが私に話するみたいに、優しく話しかけている事は分かった。
体も気怠く、頭がまだぼんやりしていた私はそれ以上動けなくて、ベッドの中で拓真さんが話す声だけが聞こえていた。

「あぁ。今度の土曜日だろ?空けてるって。いつも時間取れなくてごめんな。会社じゃ、顔合わしてるけどなかなか二人っきりで会えてなかったからな。え?俺だってゆっくりしたいよ。あぁ、慶都の部屋に行くから」

会社?
会社の人か…
でも、ゆっくり二人っきりって…
今度の土曜日…
仕事って言ってなかった…?
考えるけど、起き上がられない。
拓真さんが何を言っているのか、分からなかった。

誰に話してるの?
けいと、って誰?

私は気がつかなかった。
拓真さんが寝ている私の姿を確認しに、戻ってきて、またベランダに出た事を。
そして…

「…あぁ、愛してるよ。慶都」

遠くで声がしていた。