「ね、翠。これからどうしたらいいのかな?」

「へ?な、何が?」

私の質問に翠が、気の抜けた返事を返してきた。

「いや、何が?って、あの、これからの…」

「ゴホッ、あ、あん…ゴホッ」

「み、翠、大丈夫?」

飲んでいたビールでむせた翠、顔を真っ赤にして涙目になっていた。

「…っ、あんたね、なん、何でそんな事聞くのよ」

「だ、だって、初めてだし、彼氏?出来たのって、ほら…き、キスから次っていつ、な…のか」

翠に聞きながら、恥ずかしくなってきた。
やっぱり止めとこう、聞かない方が…

「あ、あの。やっぱり…」

「香里、やりたいようにやればいいのよ。そんなに緊張しないでさ。電話したい時に電話。LINEしたい時にメッセージを送る。会いたいって思ったらいつ会えるの?って聞いたらいいじゃない。ま、あまり重いのは嫌われるから、気使った方がいいけど。奥菜さんて、そんな風に見えなかったし、最初なんだから、聞いてみてもいいんじゃない?連絡していい?って」

黙って話をして聞いていた。

そっか、いいんだ。

「そだね、聞いてみる…。でも、あ、あのエ…」

翠が口の端を上げて笑った。

「エッチの事?」

ズバリ言われてしまって、両手で顔を隠した。

「そんなにハッキリ言わないで…」

「香里はどうしたいの?」

頬づえをついて、翠が問いかけてきた。

「どうしたい、って?」

「すぐしたいの?」

「やだ、したいって」

「だって、そうじゃない。先延ばしにするのもありだけど、体の相性って大事よ。ま、香里は初めてだから時間かけた方がいいかもね。うーん、あんまりすぐにしない方がいいか、そうだよね。そう考えると…」

翠は、一人話しながら納得していた。

「流されてしない方がいいし、奥菜さんには待ってって言った方がいいかもね」

言う?
それ言うの?

「え?言うの?待って下さいって?」

翠がビールを吹き出した。

「な、何…」

「あんたね、待って下さいって言うんじゃなくて、そんな空気になった時に言うの。また、そんな関係になるのは早いと思うって。で、何で?って聞かれたら、初めてだから怖いって言うの。それでも待ってくれないんだったら、止めてた方がいいよ、大事にしてくれないって事だから」

「そんなものなの…?」

「人によりけりだけど。初めてだから待って、って言うのを強引にするのは大した男じゃないよ。私がそうだったから…」

「え?そう…なの」

「ま、昔の事だけどね。私もいろいろあったのよ。だから、香里には失敗してほしくないって言うか…散々茶化してたけどね。これが本心かな。だって初カレでしょ?うまくいって欲しいじゃない」

「ありがとう、翠」


それから、私達は遅くまで飲んで語り合った。