仕事を進めながらも、拓真さんと少し話が出来た。

拓真さんの順番が回ってきて、診察室に入って行った。

時々、咳してたけど大丈夫かな。
さっき、今日は風邪だと思うから念の為に来た、って言ってたけど。
昼から会社に行くって、仕事熱心だな、休めばいいのに…

「浜口さん」

「はい」

診察室から出てきた、原に呼ばれた香里は、カルテを渡された。

原は香里にカルテを渡しながら、

「こちらの奥菜さん、点滴の指示が出たからお願い出来る?これ」

「はい。分かりました」

点滴指示が出たと、なると辛いんだろうな。大丈夫かな…拓真さんを見ると、やっぱり少し辛そうな顔に見えた。

「大丈夫ですか?点滴はあちらになるので、きてもらってもいいですか?」

声をかけると、拓真さんは大丈夫と私の後を付いてきてくれた。

「昼から仕事に行く、って話したら先生が点滴しとこうかってね」

「そうなんですね。無理しないでくださいね」

話をしながら処置室に案内した。

「ここに横になって下さい」

拓真はベッドに横になった。
知った顔がある事で、少し安心していた。

「奥菜拓真さん」

「あ、はい」

拓真は、香里から名前を呼ばれてドキッとしていた。ベッドで横になっているせいもあり妙な違和感も感じていた。

「間違いないですね、点滴しますね」

間違い、と言われて名前の確認をしていたんだと。
熱のせいだろうか、頭がボーっとしてきていた。

「チクッとしますけど、大丈夫ですか?」

「大丈夫、です」

香里は、いつも慣れた点滴なのに、緊張していた。
拓真の腕を消毒する動作さえも、腕に触る事に意識してしまっていた。

「大丈夫?緊張してる?香里ちゃん」

私の緊張が伝わったのか、周りのスタッフに聞こえないように、拓真さんが話しかけてくれた。

香里ちゃん

と、言われて私の緊張もピークに達していた。