── 不機嫌 ──

さっきから夢羽の顔が不機嫌だ。それも無理もないだろう。


「なぁ。"毒吐き天使くん"」
「……。何ですか。」
「何でそないに不機嫌顔なん?」
「あなたのせいですけど。」
「夢羽。終わったわよ。」
「あ、本当にありがとう─ ガバッ ─」
「わっ!む、夢羽。危ないでしょ?」
「あ、ご、ごめんね。」
「ふーん。唯那ちゃんに"懐く"天使くんやったんか」
「なんなんですかあなt「じゃあ雪先輩お大事に。」


私は、夢羽の言葉を遮って、保健室を出ていった。


─ 移動中 ─

「ねぇ。なんでさっき邪魔したの。」
「邪魔じゃないわ。喧嘩は、嫌なのよ。」
「あの先輩嫌い。なんで仲良いのさ。」
「なんでって、立花先生の弟だからよ。」
「え…。あの眼鏡かけた関西人なのに、標準標準語喋る先生の?!」
「そう。だから声を掛けられたのよ。」
「麗都先輩の事待ってる時?」
「そう。」
「ふーん。」

そう。出会いのきっかけは、立花先生だった。
立花先生に弟がいることは、事前に知っていたけれど(立花先生が言っていたから)まさか私の話を雪先輩にも、言っていたことは、初耳だったし、びっくりしたのだ。
最初は、立花先生さえもあまり好きではなかった。
─ 「唯那ちゃん。」─ プイッ ─
「左腕見せてくれるかな?」─ プイッ ─
「ん…。雪都」
「なんや兄ちゃん。」
「その子の心を開いてくれるか?」
「え、俺がしていいの?」
「あぁ。兄ちゃんのお手伝いしてくれるか?」
「うん!!」




─ まぁ最初は、こんな感じだった。


私は、雪先輩のことを忘れていたが、"雪くん"と呼んでいた事は覚えている。



だから雪都先輩ではなく、"雪先輩"なのだ。




私が麗都の帰りを2年生フロアで待っているときだった。



─ 「なぁ。君、結城 唯那ちゃんやろ?」

「…?…。はいそうですけど…。何ですか?」
「俺の事忘れた??」「え...。だれですか?あなた…。」「まぁ無理もないか…。」─

という感じだったのだ。あとから説明を受けたが、すごく衝撃的だった。