「キスが? キスって聞いてからするもの? でもさ、好きだあああ、やべええええ、好きだああって気持ちが先走ったんだよ。悪かったよー。次は聞くからさ」

 そんな問題ではなくて、とにかく、ずるい。
 謝ってくるのもだけど、そんな顔するのもだし。
 経験ない私が、聞かれたらするはずもないし。

 そもそも、なんで私なんですか。

 ぐるぐると考えていたら、頭の中と同じようにかき氷がほぼ溶けてしまっていた。
 百円のかき氷が、シロップジュースに変わる瞬間を、ただただ二人で見ているだけ。

「俺、蕾とお付き合いがしたいんですが」

「この状況で、まだその話続けるんですか! というか、キスと前後が逆です」

 ひー。思わず、クラスで一番目立っていて、怖くて、お調子者の彼を怒鳴ってしまった。
 明日から、本当にクラスに居場所がないかもしれない。

「思い出にしたくないんだ。俺、蕾と受験勉強しながら、先生の悪口言ったり、追試受けたり、怒られたり、笑ったり、で、たまに眼鏡をはずしてキスさせてほしい」

「……受験生だから、お付き合いとか、無理です」