「忘れた」
ポケットから百円玉を二つ出してレジの横のテーブルに置くと、勝手にレジの中に入って小さな冷蔵庫を開けて、丸い容器に入った氷を二つ持ってきた。
そして慣れた手つきでかき氷を二つ作ってくれた。
「あの、お金」
「はー!? 百円なんてもらえないって。てか蕾、イチゴ味?」
「あ、うん」
「俺、メロン」
またレジの中に勝手に入ってシロップを持ってくると、氷が溶けるぐらい沢山かけだした。
「紗矢に聞いたんだけどよお、かき氷のシロップって色が違うだけで味は全部一緒らしいぜ」
「うそ。だってメロンとイチゴだよ。全然違うよ」
「目を閉じて食べてみたらいいじゃん」
デートっていうから、こっちは心拍数がおかしいのに。
陣之内くんは平然としていて、しかも私にスプーンに乗せたかき氷を差し出してきた。
目の前に差し出されたかき氷に、戸惑う。
「蕾さーん、かき氷の苺シロップみたいに真っ赤になってますよー」
「だ、だって、自分で食べます」
「いいから。はやく目を閉じて」
「うー……」
私は今、何をしているの。



