優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。



 今まで傍に会ったものをすべて手放していく。
 自分の意志ではない。

 自分の意志は何一つ叶わないまま。

 全部否定されて好きなものを取り上げられて、親が用意した環境でまた一から作れ。
 それが子どもにとってどれほど負担かをわかっていないんだ。

 彼みたいに強そうな人は特に。
 大人は簡単だろうって決めつけてしまう。

「……怖いよね。転校」

私は、彼がもじもじと動かしている手を、恐る恐る伸ばしてそっと上から触れた。

「ここが好きだから、だよね。私は、私は同調はしてあげられないけど、陣之内くんの気持ちを今、聞いたから、ちゃんと聞いたから、だから否定だけはしない。好きなものを手放す気持ちを臆病とは思わないし、たかがって言葉にはしないから」

 子どもだって笑われてしまうけど、でも私は否定したくない。
 頑張って声をあげている彼が諦めないと言ってるなら、諦めないでほしい。

「理解はできないけど否定しないって、すげえのな。説得力ヤバイ」
「あの、元気でました?」

聞くと、にかっと笑って勢いよく立ち上がった。

「ここのばあちゃん、腰を痛めてんだ。かき氷はセルフって。食べるだろ?」
「お、おいくらですか?」