全く理解できない。

 あ、そうだ。可愛い女の子たちに囲まれすぎて、私のことを物珍しいって気になってるだけじゃないのかな。

「なんていうか、風が吹いたら簡単に飛ばされそうな、弱そうなとことか。あと指が綺麗。その指で、あの絵を描いたのかあって」

 言いながら、陣之内くんの顔が真っ赤になっていく。

 先生を茶化したり、罰のプール掃除をふざけている彼が、こんな純情そうな顔をするとは思わなかった。

「俺、クラスの奴らは皆好きだ。一年間一緒の教室で、俺と同じぐらい楽しく過ごせたら嬉しいなって思ってる。だから、なんで蕾は逃げてるのか理解できなかったけど、でもそれでも話して見たかったし、嫌われてても……いつか話してくれるかなって」

「嫌ってない、です!」
「でも敬語だし、視線逸らすじゃん?」

「だから、男の人、全般にそう、ですけど」

「すぐ言い訳する。俺はずっと見てた。下を見てたのは紛れもなく蕾だ」
「……それはそうですけど」

 こんなメガネザルに?
 未だに信じられなかった。

「だから、今日は嬉しかった。ありがとう」