優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。



 蝉の声が、昨日邪魔された腹いせのように、容赦なく鳴き、校舎に跳ね返って騒音になっている。

 三年はもうすぐしたら夏休みで、毎日補講という名の受験勉強が始まって、夏を肌で感じる前に秋に変わってしまう。

「だっり。プールの掃除って意味わかんねー」
「俺たち綺麗だし、水抜いて終わればいいじゃん」
「五人で掃除とかいつ終わるの」

「やべえ、照り返しで地面熱い。スリッパ履こうぜ。校長室の前の来賓スリッパ取ってこいよ」

放課後、まだ補講が始まっていない今、彼らの声は校舎によく響いてくる。
迂闊というか反省がないというか、昨日の喧嘩も忘れて仲良しだ。
途中から水遊びになっているのも、丸聞こえ。
 蝉の声をかき消して、季節なんて関係ないように、それこそ受験生なんて自覚ないように遊びまわる声。先生から怒られるの、怖くないのかな。昨日、沢山怒られたのに考えを改めるつもりはないのかな。

「……いいなあ」
「部長?」