優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。


「でも、それって」
 違うよねって言おうとして、彼が何を言っても変わらなさそうな意志の強い顔で私を見ているのが分かった。

「……ありがとう、でいいのかな。私が逃げたから喧嘩になったから、ごめんなさい?」
「いらねえよ。俺が苛々してたからってだけ」
 隠しちゃった。
そんな言葉が浮かぶ。
でも陣之内くんの耳が真っ赤に染まっている。

 普段言いたいこと、思ったことを言ってくれる彼が誤魔化した気持ち。
 その気持ちを、私はちゃんと知らないといけないんじゃないかな。

 知りたくて、でも上手く言えなくて口籠ると、彼はもう次の話題を見つけてしまっていた。

「でもさあ、星の入賞した作品は欲しいな」
「うーん。いつ返却されるかもわからないよ」

 夏休み前に戻ってくる可能性の低さは、彼が転校する前に見るのは不可能だとうことだ。

「蕾も俺が転校するって思ってるんだな」
「えー……、うん」

 だって先生から発表あったし、今も渡り廊下から見えている工場は、縮小されやがて閉鎖されてしまうと言われてるんだ。

 転校するのは決定事項なんだろうに。
「孤独な戦いだ。俺だけだ」