優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。



「これで放課後、触れる」
「今から描かないの?」

 期待して輝いている目の陣之内くんが私を見るので、私は後ろにある時計を指さす。
 お昼休みはもう10分もないのだ。


「えーさぼろうぜ。放課後、プールの掃除なんだよ。五限目、単位とか関係ない国語じゃん」

「だめ。これは先生に借りたものだし、勉強が優先って言ったもん」
「あー頭固い」

 頭固いと言われ、ぐうの音も出ない。

どうせ古臭くて真面目でつまらない考え方しかしません。

本当は教室まで別々に帰りたかったのに、離れて歩く私に『何してんの』って本当に不思議そうな顔をしている彼を見て、無駄な考えかなってやめた。

 昨日のプールの事件は、私をからかった男子と喧嘩になったはずなのに、どうして平気なのかな。
「はっ」
「なに? わすれもの?」
「え、いや、その」
 昨日は色々とあったから、すっかり忘れていた。
 喧嘩の原因が私で、私をからかった男子と喧嘩って、私は謝るべきなのか。
 いや、これはお礼を言うべきなのかな。

「その、プール掃除は私もしないといけないんじゃないの?」
「なんで? 喧嘩したのは俺。殴ったのは俺。で、殴り返して喧嘩したあいつら。紗矢と蕾は、どさくさにプールに落とされただけだ」