優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。


「……」

普段、クラスの中心でふざけて笑ってる彼の、闇が垣間見えた気がした。

ホラーを書いてる人ってもっと粘っとした暗い感じの人かなって偏見があったけど、彼を見て自分のちっぽけな価値観が壊されていくのを感じた。

「あのね、陣之内くん、これ……」
印刷用のケント紙をペンタブレットの中の段ボールの中から取り出した。
「こんな感じの絵はどうでしょうか」

おずおずと出したその紙を、彼は乱暴に携帯を机に置きながら奪うように浚った。
「えっと人物は描いてないの。なんか途中で主人公変わったり死んでしまうから、抽象的なのはどうかなって」

「お、おおおおー。すげえ。え、描いてくれんの?」

 驚いて、紙と私を交互に見ながら言うので、変な汗を掻きながら頷く。
「メガネザルじゃないって、言ってくれたし、紗矢のこともあるし」
「は? もちろんだし! てか、まじでいいの?」
「餞別、でしょ?」

 私がへらっと笑うと、彼は突然悲しそうな顔に切り替わった。
「……俺だけなんだ。転校しねえって諦めてないの。どうやってもやっぱ転校は避けられねえんだよああ」

項垂れた彼の顔に、髪が落ちていく。
私からは表情が見えなかった。
「まあいいか。俺、蕾の絵が好きだから。描いてもらえるだけ超ラッキーだし」