優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。



「……もう転校したい」
 明日、教室に入るのが怖い。視線が怖い。いやだ。
「部長、大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃない。それに部長でもないです」


百合ちゃんの顔を見たら安心してしまった。ああ、夏休み入る前に私は不登校になるかもしれない。

まだ冷房から熱気しか流れてこないので、窓を開けて熱気を逃しながら泣きたくなる。

「優大先輩のことですか?」
「うん。怖いよね」
「格好いいですよ。目つき悪い人がくしゃくしゃに笑うと可愛いじゃないですか」

二年生の百合ちゃんでさえ格好いいと言っているなら、怖いと思っている私の方がおかしいんだ。

「そういえば今日からプールでしたよね。ほんと、塩素の匂いが取れなくていやじゃないですか?」
「温度が低いからって中止だったよ。まだ蝉の声も微かにしか聞こえないし、プール開き早かったんじゃないかな」

 それでも体育館でバレーをするには些か暑い時期ではある。

「えー。このまま夏休みが入るまでに三回も水泳できますかね?」
「してほしいな。プールなんて行かないから授業でしかいけないもん」
「先輩ってば」