「うん。いいじゃん。よっしゃ。元気出たっ」
優大くん……。ただそう名前を呼んだだけなのに、嬉しそうで顔が真っ赤だ。
立ち上がってこちらを振り向かないまま教室を出ようとする彼は、よく見ると耳まで悪化だった。
「……部活って何時までいんの?」
「あ、一応18時まで、です」
三年生は部活は禁止なので、19時ギリギリまでは流石に居たらいけないと思って早く帰るようにしている。
「それって、待っててもいい?」
「待つって」
「絵、見たいし。俺、図書館でべんきょーしてくるから」
こちらを振り向かないまま、逃げるように優大くんは走っていった。
足音が消えてしまうまで、私は乱暴に開閉したために隙間が開いたドアをただただ呆然と見ている。
私の言葉で、彼が一喜一憂しているようにも見えた。
このメガネザルの私に、だ。
「青春ですねえ、部長」
「百合ちゃん……っ」
「優大先輩ってもっと遊んでそうなイメージだったのに、すっごい純情ですね」
「どうしよう、待つって言われたけど、終わったらその、私が図書室に迎えに行くの?」
「まあ、部長が優大先輩が嫌いならば置いて帰ればいいんじゃないですか?」



