優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。


「うっそ」
「ですので、勉強を頑張りましょう!」

 ガッツポーズでそういうと、ケタケタと笑われた。


「蕾、先生みたいで可愛い。じゃあ勉強一緒にしような」
「う。それは、ちょっと約束できない、です」
 二人で勉強なんて恥ずかしすぎて無理。
 きっと勉強に集中できないと思う。

「あの、絵も集中したいので、出て行ってください!」
「まじで? えええー」

 まだ粘りそうだったけれど、何かを閃いたようで突然私の隣の席に座ってこちらを覗き込む。

 うわあ。陣之内くんって黙っていたらほんとう、格好いい。
 睫毛が長いのに、女の子って感じがしない。指とか骨ばってごつごつしてて、大きい。
 それに靴だって何センチを履いてるのか、大人みたい。


「蕾が、俺のことを優大って呼んでくれてら帰る」
「ひ。むりですっ」

「昨日、呼ぶって約束だったろ。よんでよー」

更に顔を覗き込まれて全身から変な汗が出てきそう。
このまま恥ずか死ぬかもしれない。

「あの、ゆ、優大くん、さん」

「さんはいらない」
「優大くん!」


 優大くん。
 ひいい。私の口から、なれなれしい言葉が出てきた。
 優大くん。優大くん。

 名前で呼ぶのがこんなに恥ずかしいとは思わなかった。