優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。



 そして勢いよく閉めたので跳ね返って、ゆらゆらしているドアを見ながら乾いた笑みを浮かべた。

「それはあいつの我儘でしょ。引っ越すのが嫌って、子どもみたい」
「紗矢ちゃん、陣之内くんは本当に皆と、この町と、離れたくないんだよ……」

 孤独な戦いだって呟いていた陣之内くんを思い出して、声が震えた。
 仲がいいって思っていた紗矢が、彼の言葉を否定するのが信じられなかった。

「でも優大には何もできないでしょ。もしかして引っ越さなくてすむかもしれないって、思えるわけないじゃない」

「……陣之内くんは、あきらめて、ないよ」

 諦めない彼が悪いみたい。
「この話はやめよ。悲しくて泣きそうになる」

 ドアを閉めなおして、代わりに私の靴箱のドアを開けてくれた。
 古い中学だ。建付けが悪くて、靴箱のドアは、ぎぃぎぃと鳴っている。
 泣き出しそうな笑顔に、私もこれ以上何も言えなくて下を向いてしまった。

「それよりさ、夏休み前に優大のお別れパーティしよってことになって計画中なんだ。あんたも参加してよ」
「いつ?」