優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。



急いで話をすり替えると、紗矢は首を傾げる。

「んなのとっくに出したよ。私、推薦貰うし。まだ出してないの? どうせ普通科でしょ」
「う、うん。でも隣の市の方が偏差値いいとかお母さんが言い出すから」

「えー、やめときなよ。制服がすっごいださいとこじゃない? ワンピース型だから改造が大変なんだよ。さっさと出さないとこいつみたいに先生に呼び出しだよ」

再び、話題は陣之内くんに戻された。

彼は困ったような顔で軽そうなカバンの奥からくしゃくしゃのプリントを取り出した。

「親のハンコもらえなかったから、百円ショップで判子買って押したのに、先生が返却してきたんだよ」
「どこにしたの?」

「俺の家の近くの工業高校。将来、俺はメカニックになるからな」

ふふんと何故かドヤ顔で言ってるけど、紗矢の顔が渋くなる。

「あんたの引っ越す先からここまで遠いんでしょ。近くに工業高校あるって言ってたよ」
「俺は引っ越さねえもん」
「じんのうちー!」
 校舎から先生が大声で彼の名前を呼ぶので、急いで携帯をポケットにしまうと手を降る。
「せんせー、おはよー!」
「今、手に何を持ってたー?」