「リリーはどこにいるんだ?」

俺のひとり言にイワンが答えた。

「リリーなら、体調が優れないから夕食はいらないってさ。まあ、リリーなら夕食のメニューに特別な感じは絶対しないよね。すっごく豪華だもん」

興味深そうに料理を見つめるイワン。たしかに料理は見たことないものばかりだ。

しかし、俺の頭の中ではリリーのことでいっぱいでそれどころではない。リリーの様子を見に行きたいが、対策本部の議長という立場上この場を離れることはできない。

しばらくすると、この屋敷の主人であるベルベット卿が現れた。貴族の登場に、広間は静まり返る。

ベルベット卿は高級なスーツを身につけ、俺たちを嘲笑うかのような目で広間を見渡した。背は低く、頭は……ずいぶんと寂しいことになっている。

「世界平和対策本部の皆さん、ようこそ我が屋敷にお越しくださいました。皆さんにとってここはたいそう刺激的でしょう。幸運だと思っていただきたい。こんなことは、きっと一生ないでしょうからなあ」

ゴホン、と咳払いをした後、ベルベット卿は偉そうに腕を組みながら言った。

広間の空気は一気に冷えていく。