心臓の脈拍を上昇させて、
頭をクラクラとさせた。


彼はこの金縛りをもう少しだけ経験したいと心の底から思った。

金縛りが解ければ、
きっと目の前の少女は消えてしまう。


それがたまらなく悲しかった。

たぶん現実世界の仲良し学級には、

こんな幻想の世界に生きるような少女はいないのだ。

全ては幻で、幻影で。  

もしかしたらこの世界だって、

巨大な神様が見ている大きな夢である可能性すらあるのだから仕方がないじゃないか、

と考えてみる。

「……じゃあね」

少女は囁いた。
彼女の可憐な指先が、彼のおデコを撫でる。
イイ子。イイ子。


直後に倫太郎は目を覚ます。

窓がしっかりと閉められている事を確認した。

全身の痺れが消え、
体が自由になった事を実感する。

そしてあの少女も……いなくなっていた。


けれども心臓の動悸だけは収まってはいない。
少女の温もりがまだそこにある。


「今日。仲良し学級に行ってこよう」