その夜。

 お風呂上がりに何か飲もうとリビングに入ると、兄がソファにどっかり腰掛けてテレビを見ていた。
 キッチンで冷たい麦茶をグラスに注ぎ、兄の隣に座る。

 テレビではチキンやジュエリーのクリスマスに向けたCMが流れている。

 それらをぼんやり眺めながら何気なく兄に話しかけた。


「お兄ちゃん24日デートなの?」

「いや、俺は25。碧ちゃん24日バイトなんだよ」

「ふぅん」


 テレビにケーキのCMが映る。
 つやつやの苺が鮮やかなショートケーキが見るからに美味しそうに画面を彩る。


「俺やっぱケーキは生クリームたっぷりの苺のヤツが一番好き」

「…子供っぽい」

「何言ってんだよ!大人ほど王道の良さが分かんだよ!!大体俺もう20歳だし!成人してるし!!」

「大変な大人がいたもんだね」

「酒も飲めなきゃ11時以降出歩けない未成年に言われたくない」


(ん?)


 11時以降出歩けない未成年─

 兄の言葉に私の頭にふとある考えが思い浮かぶ。


「ねぇ、お兄ちゃん。ていうことは24日、ヒマ?」

「ん?あぁ」

「私ね、まだ誕生日プレゼントもらってないんだけど」

「うん?」

「大好きなオ・ト・ナのお兄様にお願いがあるのっ」

「え…」


 私は先生にしか見せないような満面の笑みを、怪訝そうに顔を引き攣らせた兄に向けた。

       *   *   *