(先生…好き…)
その優しい眼を見つめ返す。
好きな人の瞳に自分が映っている、それだけでこんなに幸福だなんて…
(夢を見てるみたいだな…)
なんてぼんやり考えていた時、先生が口を開いた。
「駄目だよね、こんなとこで」
先生は笑って肩を竦める。
「俺がちゃんとしなくちゃなのに、南条といるとどうも、ね。自分に甘くなってしまうな」
「そんなこと…」
「そんなことあるよ。多分俺、南条が思ってるほどちゃんとした人間じゃないよ。自分に甘いから心のままに生きてるしね。
意外と身勝手だし、独占欲も強い。
って、南条は知ってるか」
そう言うと先生は自分の唇に人差し指を当てて見せた。
それって…
「あ…」
選択教室での強引なファーストキスのこと…?
「嫌?」
甘い眼差しで少し首を傾げる先生に、私はぶんぶんと頭を振った。
「ふーん、そう?…
じゃ、覚悟しててね?」
今度はいたずらっ子みたいににやりと笑う先生はすごく可愛くて、どこか色っぽくて。
私は先生が身勝手でも独占欲が強くても、もうその手の中から逃れられないと思った。
いや、逃れたくないと思った。
* * *