「これは?」


「あぁ…南条、誕生日だったから…」


 先生が視線を逸らす。


「…誕生日プレゼント、です」


 少し俯くその横顔はほんのり紅く見えて。

 そんな先生がなんだか可愛くて、思わず

「ふふっ!」

と笑いが零れる。


「ありがとうございます。うふふっ!」

「何笑ってんの!」


 先生がこちらに不服そうな視線を向けるけれど、紅い頬が可愛いからちっとも迫力ない。


「ねぇ先生?開けてみていい?」

「え?いや、駄目だよ。誰か来るかもしれないし」

「そっか…
 じゃ家で開けるね」


 残念だけど、しょうがないよね…


 紙袋を手に取ってしまおうとすると、


「あっ!やっぱ、今開けて!」


と先生が制した。


「どうしたの?」

「え…いや、だって…」


 先生は口に手を当てて、歯切れ悪く口籠る。

 赤らめた頬で視線を彷徨わせる様はますます可愛さ倍増。



「南条に気に入ってもらえるか…やっぱ気になるから…」


「え…」


 バサバサバサ!

 私まで動揺して紙袋を落としてしまった。


「あっ!ごめんなさい!!」

 紙袋を拾い上げ、改めて中を覗く。

 中身はリボンのかかった上品な箱。


「じゃあお言葉に甘えて…開けさせて頂きます」

「…はい、どうぞ」


 変な言葉遣いに変な空気。

 ただ箱を取り出してリボンを解く音だけが聞こえる静かな部屋。
 その上先生が私の手元をじっと見るものだから、すっかり緊張してしまって、煩いほどに脈打つ心臓の音も聞こえてしまいそう。


 覚束ない指でなんとかリボンを解き終えて箱を開けると、


「うゎ…ぁ…」


 そこには真っ白なふわふわのマフラーが入っていた。


「綺麗…」


「今度から外で二人で逢うときはそれ使ってよ」


「え…」


 それって…

 学校以外でも一緒にいられるってこと…?