と、そこで清瀬くんはぱっと身体を離した。


「やっぱここじゃちょっと、ね」

 清瀬くんが私とみんなを交互に見て言う。


「また後で。二人きりになってからね?」

「え…」


 そんな清瀬くんと私をみんなが囃す。

「えー!ユウト、見たかったー!」

「きゃはは!悪趣味~。でも確かに見たかった!」

「ダーメ。他の客もいんのにここでディープキスとか出来ないっしょ」

「えぇっ!ディープかよ!あっははは!」


 このノリ、付いていけないんだけど…


 そう思って俯いていると、一人の女の子が別の女の子に向かって、

「奈穂子もいい加減なんか言いなよ?」

と声を掛けた。

 奈穂子と呼ばれた女の子は他のみんなの楽しげな様子に比べて表情なく、テーブルの奥の端の席に座って頬杖を突いていた。


(あの子…塾で清瀬くんにくっついてた子…)


「別に…あたしは…」


 奈穂子ちゃんは私に眼を向け、一瞬眼が合うとふいと逸らした。


「ユウトが好きな子なら、別にいいと思う…」


 あぁ…
 彼女は清瀬くんのこと好きなんだな…


 それに気付くとなんだかとても罪悪感を感じて、胸が痛む。


「んじゃ、俺ら行くから」

「あ…」


 清瀬くんが私の手を引いて席を立ち上がる。


「えーユウト来たばっかじゃん?」

「お前らいたら俺らイチャイチャできねぇじゃん。ほら、さっきの続きしなくちゃだし。なぁ舞奈」

「えっ!」


 思いっきり退く私にまたみんなが笑う。


「ユウト、マジやべぇ」

「あんまりガツガツしてると嫌われちゃうわよー」

「ユウトなら大丈夫じゃね?」

「あはは、あーね!」


 清瀬くんに手を引かれて、私はみんなに会釈すると清瀬くんに付いて店を出た。