「…泣いとけ」 …え? 耳元でつぶやく彼の低い声がやけに大きく響いた。 機械の音も外から入ってくる音も、廊下からの音も無い。静かな病室は、まるでこの世界にあたしたちしかいないようだった。 「俺、希愛の笑った顔は好きだけど、無理して笑ってるのは好きじゃねぇ」 再びつぶやかれた言葉は、さっきより何倍もあたしの中に響いた。 真っ暗でどろどろの心を照らす、一筋の光みたいに。