「どうした?」


背中をさすってくれる、大きな手。

耳に響く、安心する優しい声。


それだけで、涙が止まらない。

辛いことなんてない。

それなのに…。

こんなのあたしじゃない。

絶対に、あたしじゃない…。


「希愛、とりあえず立てる?」


颯斗の問いかけにコクリとうなずく。

場所、移動しないとダメだよね。

人の病室で泣きじゃくるなんて、迷惑極まりない。