「なんで、泣いてるの…?」 「バカ、泣いてねぇよ…。先生、よんでくる」 逃げるように病室を後にする颯斗の後ろ姿を、じっと見つめた。 もう少しだけ、傍にいたかったから、少しだけ残念だなぁ。 「希愛!」 先生と一緒に病室に入ってきたのは、お兄ちゃんとお父さん。 「希愛ちゃん、気分はどうかな?」 「元気、です……」 胸の痛みも息苦しさも、不思議なことになかった。