こんなにも愛おしい人が、二度と会えない存在になると考えただけで、涙が止まらなかった。




今まで、
当たり前のようにそばにいて。

当たり前のように笑いあって。

当たり前のように照れ合った。


それがどれだけの奇跡だったか、今になって思い知らされる。






あれから3週間が過ぎた。

だけど、希愛が目を覚ます気配は一向にない。発作もなく安定しているだけいい方なのかもしれないが、正直、俺の不安は1ミリも消えていない。

いつ急変するかも分からない。今、"その時"が来てもおかしくない状態まできているのだから。



「希愛……」


思わず、名前を口にする。



「俺、希愛に伝えたいことがまだあるんだから…。頼むから、目、開けてくれよ……。いつまで寝てんだよ…」



静かに眠る希愛の手をぎゅっと握りしめる。



温かい小さな手。その温もりは、生きていると必死に叫んでいるようだった。