ただ、雨あがりの空や遠くに見える虹は見たくなかった。 多分、あたしに明るいものは似合わない。 真っ暗で、光の届かない深い海の底があたしの居場所だったのに、颯斗は一瞬であたしを光のある世界に連れ出した。 大嫌いな空も、颯斗がいるだけで好きになれる。 それだけで、あたしの中に広がる景色は美しくなる。 「あの日病室で会った時、初めてヤンキー見たのに全然怖くなかった」 見た目に似合わない言葉をかけて。 もしかすると、あの時から颯斗は優しい人だってわかっていたのかもしれない。