「怖いか、ねぇ…」


おばあさんの薄い唇がゆっくりと動く。


「すみません、こんなこと訊いて…」


「いいのよ。私は、死ぬことが怖いなんて思ったことないわ。むしろ、楽しみに思えてしまうの」


…死ぬことが楽しみ?

その答えはあたしが予想もしていなかったもの。


「天国はどんなところか、逝ってみないと分からない。それに、世界でたった1人、愛する人が待っている場所だもの」



“愛する人”


その言葉に、あたしの中にある何かが大きく脈打った。