「違う!誰も希愛のこと責めるつもりなんてない。なんで分からないんだよ…っ!」


分からないよ…。

なんで責めないの?

なんであたしを助けたの?

全部、分からないよ…。


じんわり目頭が熱くなり、大粒の涙が溢れた。

止めどなく頬を伝う涙は、拭われることなくシーツにシミを作り続ける。


「俺が言うのも違うけど、一回ちゃんと話せ。希愛と向き合おうとしてんだから、逃げんな」


ボロボロの胸に響く、颯斗の言葉。

背中をさする優しい手。

不思議なことに颯斗の言葉は信用できる。

くれる言葉があたしを前に進ませてくれる。

今まで、拒んで、逃げてきたのに…。

今なら話せる気がするのはきっと颯斗のおかげ。


「おにい…ちゃんは…、知ってるの?」


あたしが知らないこと。

全部、お父さんから聞いてるの?


「あぁ」


短い返事が返ってくるのに時間はかからなかった。