「知ってるっつーか、病院に来たらいつもロビーにいるから覚えてる。希愛の兄貴だったのか…」


いつも…?

嘘だよ…ね?

颯斗の言葉は信じ難かった。

だってお兄ちゃんは、全国的に有名な大学の医学部に通っていて…。

バイトまでして、おまけに学校と病院は逆方向なんだよ?

あたしなんかのために、病院に来ている時間、ないよ…。



「希愛、一回ちゃんと話がしたい…」


震えたお兄ちゃんの声。


「あたしは、話すことなんてない…」


その震えがうつったかのように、あたしの声も震えた。